老人ホーム 東京の「裏ワザ」って?
銀行監督当局は、トレーデイングがほかの銀行業務よりは利益の変動が激しく、そこから発生する損失が金融機関を揺るがしかねないと懸念した。
プロプライエタリー・トレーデイングとは何か、どれくらいの規模なのか、どれくらい広がっているのか、リスクはどの程度か、リスク管理は十分か。
FRB、0CC、FDICは、何年にそうした調査の結果を「商業銀行のトレーデイング活動」と題する報告にまとめた。
それによると、ほとんどの銀行がトレーデイングから発生するリスクを、中核自己資本(ティア1) の3%以内に抑えていた。
また銀行は、トレーデイングから発生するリスクを適切に管理しているとされた。
例年時点で、トレーデイングは大手銀行の利益を占めていた。
また銀行はトレーデイングによって得た金利や為替の情報を顧客に提供でき、売買は正確な価格決定に資するとも指摘。
FRBなど金融当局は、S氏の提起した銀行行動への疑念を拭い、トレーデイングは銀行業務の多様化に役立っていると結論付けた。
当局が自己売買を正当化したのである。
銀行の為替取引など、市場取引の拡大に対応して、パーセルI員会でも対応策を練っていた。
自己資本比率規制(パーゼルI)は、信用リスクに対して自己資本を積むことを求めており、市場リスクには対応していなかった。
そのため、パーゼルIを市場リスクに対応する形で改正した。
改正点は、為替、債券、株式、商品などの市場リスクに対して一定の自己資本を積ませることを決め、それに対応できる新たな資本(テイア3)も設けた。
融資などから発生する信用リスクと為替などから発生する市場リスクを区別し、それぞれに自己資本を積む形にした。
銀行はそうした為替などの取引を、トレーデイング勘定と呼ばれる融資などを扱う銀行勘定とは別の勘定で実施していた。
パーセルIは銀行の求めに応じて、トレーデイング勘定での自己取引に関しては、銀行が使っているモデルでリスクを測ることを認めた。
銀行にとってはトレーディング勘定を使いやすい環境が整った。
実はこれが致命的なミスだったことが、サブプライムロ−ン問題で判明することになる。
トレーデイング勘定に関する制度が整ってくると、金融機関はそれを活発に使い始めた。
多くの銀行が自己取引で手っ取り早く利益が上げられると考えたからだ。
コストを考えると、自己取引は効率的に見えた。
通常の貸し出しだと営業店で多くの行員を使って営業し、それを事務処理し、審査もするため、巨額の経費がかかった。
それに対して自己取引は、ディーリングルームには費用がかかるものの、貸し出しよりはるかに少ない人員で高い利益を事受できた。
このため、伝統的な貸し出しなど、利益率の低い業務から自己取引に軸足を移した。
もうひとつ大きかったのは、トレーデイング勘定の規制の甘さだ。
同勘定はもともと上場株式や国債など、流動性が高い金融商品を短期で売買するための勘定である。
長期で抱えることを想定していないので、保有する金融商品については信用リスクがほとんどかからない。
パーゼルはもともと信用リスクを重視し、市場リスク対応はあとから付け足したため、信用リスクと市場リスクが分断されていた。
市場リスクに応じて自己資本を積むことを求めるトレーデイング勘定には、信用リスクに対応した資本負荷は甘く、銀行がその盲点を利用した。
具体的には、サブプライムローンを裏付けとする証券化商品やLBO融資(借り入れで規模を膨らました買収向け融資)など、流動性の低い金融商品をトレーデイング勘定で売買し始めた。
流動性が低い分、利回りは高く、銀行は高い利益を事受できた。
社債などがデフォルトを起こしたときにそのキャッシュフローを肩代わりするクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)も、トレーデイング勘定で取引した。
銀行勘定で取引すると、CDSのプロテクションの売りは、信用保証と同様に対象債権の100%の信用リスクがあるとみなされ資本を積まなければならないが、トレーデイング勘定だと信用リスクはかからないとみなされたからだ。
トレーディング勘定は規制が極めて緩く、何でもありの無法地帯になった。
銀行はそんな無法地帯を利用してさまざまな取引を急拡大させていった。
欧州の銀行に自己資本に対する資産の倍率(レパレッジ倍率)が数十倍というところがあるが、それは資本負荷が小さいトレーデイング勘定を使った取引拡大の結果でもあった。
そして銀行は高騰する住宅価格を利用して儲けようと、トレーディング勘定を使ってサブプライムローン関連取引に出た。
巨額のマネーがそうした市場に流れ込み、相場が上昇し、それがさらに取引を呼び込んだ。
銀行マネーがサブプライムローン関連の相場を押し上げ、バブル的に膨らました。
住宅バブルの崩壊は、そうした自己取引を直撃した。
関連金融商品が下落し、トレーデイング勘定は、その値下がりで大きな損失を被った。
欧米金融機関の2007年後半から前半の比較的早い時期のサブプライムローン関連損失は、トレーディング勘定での証券化商品の値下がりに響いた。
損失は、トレーデイング勘定が抱えていたLBO融資にも及んだ。
サブプライムローン問題で金融機関や投資家が高いリスクを取ることに慎重になり、LBO融資の取引が急速に細った。
その結果、売却を前提に抱え込んでいた融資が売れなくなった。
融資の価格がじりじり低下し、損失が拡大していった。
損失は欧米勢にとどまらず、日本ではMフィナンシヤルグループが巻き込まれた。
Mは、LBO関連を有力な収益源になると見て、ロンドン拠点でトレーディング勘定を用いて取引を強化した。
前年四月末に売却予定貸出金を9900億円抱えたが、貸出金売却損失引当金は280億円(2・8%)しか積んでいなかった。
サブプライムローン問題で、LBO関連はほとんど動きが止まった。
みずほは売却を試みるが思ったほど売れず、9月末で売却予定貸出金は6180億円も残った。
Gなどは額面をはるかに下回る価格で売却に踏みきっていたが、みずほは貸出金売却損失引当金を540億円(8・7%)積んだだけだった。
結局、Mは4月に、売却予定貸出金のうち3267億円分を売却予定貸出金以外の貸出金に、保有目的区分を移した。
これは、いわばトレーデイング勘定から銀行勘定への勘定の付け替えで、トレーデイング勘定の売却予定貸出金残高は990億円にまで減った。
移転によって、厳格な時価評価は回避でき当期利益へのマイナスは和らげられるが、値下がりしたままのLBO関連融資を銀行勘定で抱えつづけることになる。
自己取引失敗のツケは長期にわたって、銀行経営のお荷物になりつづける見通しだ。
世界的な金融規制の見直し論議が進むにつれて、トレーデイング勘定への規制強化が欠かせないとの意見が強まってきた。
カジノバンキングを招いたのは、銀行の欲、監督当局の怠慢と並んで、パーセルI員会の国際規制の欠陥である、との認識が広がってきた。
O政権は金融規制改革案の中で、パーセルI員会に対して、トレーデイング勘定で取引するリスクの高い資産についてはパーゼルEでより高い自己資本を積むように求めるべきだと、パーゼルEの改善を促した。
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